ベンゼンのおもちゃ箱

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色々自作してる人です。知識が浅いので所々間違っているところもありますがお許しを。

博士での就活を終えて

 

こんにちは。

おそらく1年以上ぶりの更新です。

今回は博士課程での就職活動の歩みとそれを終えての感想などをまとめておこうと思います。

 

就職をしようと思った経緯

色々と話す前に、まずは自分のバックグラウンドなどについて説明しなければいけません。が、説明するのが面倒なのでこちらの記事の最初の方でも読んでください。

生物学専攻の修士2年がDC1に応募して面接免除採用をもらった話 - ベンゼンのおもちゃ箱

小学生から生粋の科学好き・筆頭論文2報あり・DC1持ち、、、いかにもアカデミアに残りそうな雰囲気ですが、私はアカデミアのポスドクではなく民間企業への就職を選びました。

理由としては単純で、「今いる場所を出て企業で研究してみたかった、働いてみたかったから」です。以下にそれを考えた詳細を書きます。

 

(1) 現在の研究テーマに拘りがない

自分のイメージとして、博士の皆さんは知的好奇心や自己顕示欲に溢れ1つのテーマに対して無我夢中で研究をやっている印象があります。しかし、私はそんな"3度の飯より研究が好き"なタイプではありませんでした。それは現在のテーマに興味はあるものの愛着がないからだと思います。ではなぜ博士課程に進んで研究をやっているかというと、研究活動においてある課題に対してその解決方法や手法を開発することにやりがいを感じているからです。特にこれまで困難とされてきた事、誰もやった事がない事に対して自分の経験や知恵を絞って試行錯誤する事で問題を解決する事に大きな達成感を感じます。そのため、扱っている生物や事象に拘りはなく、研究のプロセスが好きである事に気づいたため、現在の研究からそれほど後悔なく離れる決断を下す事が出来ました。(同じくこの理由から企業もこだわりなく幅広く探す事になります)

(2) 企業での研究・仕事をやってみたい

これまでずっと大学で研究してきたので、企業での研究はどう違うのか実際に身を持って知りたいと思うようになりました。また、私は学部1年から修士2年までアルバイトをしていましたが、他学部の研究室で技術補佐員をしていましたため、小学校に入って以来教育機関の外を出たことがありませんでした。そのため、社会で働いた経験がないので、ここでアカデミアを出て働かなかったらもう一生その機会はないと思ったこともあります。

(3) 研究のやりがいを感じたい

現在行っている研究が理学系の基礎研究であり、自分の研究成果が社会の役に立っている実感を得られにくく、やりがいが感じられなかったことがあります。企業の成果は社会への還元が実際に感じやすく楽しく働けるのかなと思いました。

この企業就職への選択は、DC1の内々定をもらった時には既に決めていたと記憶しています。修士2年の研究発表会後に行われた博士課程の入試で、「博士修了後は企業に行きます」とアカデミアの教授が数十人いる前で宣言していました(今考えたら恐ろしいことをしたなと思います)。

さて、そんなこんなで就活をしようと思い立ったわけですが、以下に時系列順でどんな事を考えどんな行動をしてきたのかまとめていこうと思います。

 

就活ワード 語録

と、その前に一応軽く説明を入れておきます。

インターン

インターンシップの意。企業での仕事・職場体験ができる。

ES

エントリーシート。いわば履歴書。企業によってフォーマットが異なり、自分の長所や短所、エントリー理由や入社後の希望など様々。インターンへの参加も採用選考もまずはこれを出すことから始まる。

NNT

無い内定の意。内々定ではない。Twitterの就活アカウントにこの表記があったら内定が無いよということ。

ガクチカ

就活における代表的な質問「学生時代に力を入れていたことは?」の略語。

 

就活の流れ

筆頭論文がAcceptされる

修士2年の春(修了間際の時期)にsubmitした自分のサブテーマの論文がD1の1月にacceptされました。

この時点で博士の修了要件を満たすことができたため、就活へ舵を切ることが実質可能になりました。しかし、その間メインテーマの進捗が完全に止まっていた上、実験の課題が山積みでした。また、博士1年から2年への進級時に転入学を行っており、その際の規約として修業期間2年間を言い渡された(=オーバードクターできない)こともあり、就活をやっている余裕はなくDC1の研究遂行義務を果たすべく実験・データ解析に日々追われていました。

そのため、夏のインターンなどには一切参加していませんでした。

 

第1期就職活動、開始。

確か博士2年の8月くらいから精神的にも少し余裕が出てきたので、ぼちぼち就活を始めていたと思います。同大学の先輩づてに「博士の就活はD2の夏から」と聞いていたので、いろいろな就活サイトにアカウント登録をしていました。

また、秋に製薬メーカーの研究職の募集が開始される事をツイッターで知り、何社か説明会に参加していました。コロナ禍で説明会が全てオンラインだったため、実験の合間に説明会を聞く事ができたので効率よく就活できました。

しかし、いざ選考に進んでみたら結果は惨敗でした。製薬系4社を受けて1次面接落ち1社、書類落ち3社でした。当時はESの効果的な書き方も知らず、企業への理解も浅かったので、今思えば落とされて当然だなと思います。あと、自身の経験やスキルも製薬向きではなかったのでウケも良くなかったのだと思います。

 

就職活動対策

秋の対製薬企業戦に敗れNNTとなったので、就活支援サイトでの情報収集を続けながら3月の就活解禁を待つ事にしました。引き続き説明会に参加したり、バイオベンチャーにお話を伺ったりしました。

 

転機

10月に入り、ここで今後の就活の流れを大きく変える出来事に会います。就活を行っているあるいは就活を控えたD2の学生が有志で行っているオンラインでの就活対策グループです。

ホストの方は物理学を専門としているのですが、志望業界はコンサルタント業との事でした。最初は博士課程にまで行って物理学を極めたのにコンサルタント?なぜ?と思いました。当時は博士課程に行ったら学問の専門性を活かす・伸ばす業界に行くべきだという考えがあったからです。しかし、博士課程で得られる事には専門性以外にも論理的思考力、仮説思考力、プレゼンテーション能力、英語力など多くのスキルがあります。これらの中から自分の得意とするスキルを上手く使える業界・業種があれば(上手くマッチすれば)、どこへでも行けると気付きました。

これ以降、研究職に絞っていた業種にコンサルタント、業界も製薬だけでなく食品や日用品、また自分の趣味である電気系も加えて探す事にしました。

 

第2期就職活動、開始。

学部3年、修士1年の3月の就活解禁に合わせて自分も動き出しました。この時期は製薬系も視野に入れつつ、食品系・コンサルタント系・システムエンジニア系・電気系などで探していました。

以下に3, 4月の就活関連イベントのカレンダーを載せました。黄色いところが説明会や面接です。説明会や面接は基本オンラインなので、上手くスケジューリングして詰められるだけ詰めて数をこなしていました。

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最終的に説明会に参加した企業が約70社、選考へは50社エントリーを行いました。やりすぎでは?と思う人もいると思いますが、それぞれの選考が志望度の高い企業への練習を兼ねていたり、落ちた選考を振り返って自分の足らない所を対策したりする意味もあったので場数をこなす意味でこれくらいやりました。

そして、内々定は4社から頂きました。本命の企業にもご縁があって内々定を頂けたので、最終的には満足できました(詳細は控えますが、食品系の研究職です)。

途中で志望したコンサルタント職も内々定も頂けましたが、電気系は全然ダメでした。

とはいえ、内々定の数少なすぎでは?という声をたまに貰いますがその通りだと思います。その理由として就活対策が不十分だったことが挙げられます。例えば、SPIなどの試験対策が出来ていない(そもそも私は国語が大の苦手)、ESの添削をほとんど受けなかった、などです。ここら辺は自分の学力、研究で鍛えた文章力、業績等でどうこうなるものでもないので、ちゃんと勉強した方がいいと後になって思います。

 

博士での就活の所感

何個かタイトルをつけてまとめます。ネガティブなことが多めですが。

自分を見つめ直す機会を得られた

今後のライフプランを考えたり自己分析で新たな自分を知ったり、いい機会になったと思います。

博士の就活の仕方がわからない

博士卒の先輩がいない、しかも同じ研究科にも就活する同期・OBOGがいないという事もあり、どのように行動すればいいのか全く分かりませんでした。博士の就活対策グループも同じ生物会の学生が少ない事もあり情報がほとんど得られませんでした。

そもそも博士の就活は千差万別なので他人の事情を聞いた所で自分の就活に活かせるかは正直否めませんが…

一般的な就活対策はあまり役に立たない

ガクチカをしっかり考えましょう」と色んな就活対策記事書かれていますが、正直そんなもの研究一択なので面接官も我々も「(あーまたかよ)」という感じです。

博士課程として博士での話をすればあるある話となり、それ以外の話をしようとしても何年も前のことだったり「博士なのに博士課程に関するアピールじゃないんだ」ともなります。修士ならそれでいいかもしれませんが…

とはいえ、ESなどの書き方のお作法や面接対策など基本的なところは参考になるのでしっかり勉強しとくと吉です。

専門性は強みにはならない

企業側のニーズにピッタリはまるような専門職であれば話は別ですが、博士の専門性はあって当然のことなので全く強みではありません。先に述べたように、専門性以外に得たスキルを長所として話すとウケが良いと感じました。

先手必勝、なんでも首を突っ込め

論文投稿や博士取得の目処が立たないうちには本腰を据えて就活を行うことはできないと思いますが、情報収集は早めにやっておいた方が良いです。可能であれば大学や就活斡旋企業が行なっている合同説明会やセミナーに参加して雰囲気を知れるとよいでしょう。

また、先の一般的な就活対策もそうですが、社会にはどのような業界や職種があり、そこからどのようなキャリアパスを歩めるのか、自分はこれからどんな事をしていきたいのか、どんな職なら楽しく働けそうなのか、考えておくと就活であまり苦労せず済むと思います。

実は今回の内々定を承諾した企業は、12月に行われた複数企業の合同面談会でご縁があったところでした。最初はイベントの参加企業数が少なくて不参加にしようか悩んだくらいでしたが、その企業を知るうちに興味が湧いて気づけばあれよあれよと選考が進み内々定、となりました。"人は必要なときに必要な人と出会う"という名言があります。そもそもの出会いがなければ必要な人とも出会うことすら叶いません。無駄・無意味に思える事でも積極的に手を伸ばす事で、可能性を広げてみると良いと思います。

 

遺言

就活において重要だと思った事を遺言として2点だけ

  • 専門性に捉われず幅広い視野をもつ
  • 就活をやると決めたなら、出来るだけ早めに動く